虫の音

そろそろ、というかもうだいぶ前から、
夜の虫の音が騒がしい。
世の中から見捨てられたような、
東京湾の真ん中の埋立地でもそうなのだから、
それはもう、世界の隅々にまで広がらんとする彼らの底力に恐れ入る。

こないだは、僕の住処であるアパートのロビーに迷い込んだ
コオロギを見つけて、玄関の植え込みに放してやった。
丸っこい頭にずんぐりした体、しっぽに長い卵管を生やした、
メスのエンマコオロギだ。

小さいころは父とよく車で虫取りに出掛け、
二人でプラスチックの虫かごを一杯にしては、家の近くの草むらに放した。
一回に7、80匹は下らなかったが、
なぜそんなことをそんなに一生懸命やっていたのかはわからない。
虫にとってはいい迷惑だし、なにより地域の生き物の分布図を
無闇やたらといじるのは、きっと褒められたことではないだろう。
思い出すたび、いつも少し反省をする。

とはいえ、当時はそれが使命であるかのように、
僕と父は取ってきた虫を近くの草むらに放ち続け、
家の近所では次第に虫の声が響くようになった。
それは主にエンマコオロギで、たまに、ハネナガキリギリスや
ウマオイやトノサマバッタなんかが混じった。

今でも、家の裏に聳える小さな山のあちこちで、彼らの子孫が
ぽつりぽつりと鳴いている。
寒くて餌も少ない僕の街では、結局、あまり数は増えなかったようだが、
かつて、コオロギの鳴くことはなかったあの港町の夜に、
時折響くコロコロという呑気な音色は、いつもいつも、
僕に懐かしい記憶を思い起こさせる。

手元の携帯電話には、先日助けたのコオロギの写真が
一枚残っていて、僕はたまに、それを眺める。

最後に、父と虫取りに行ったのは、いつだったろうか。
もう、親子で虫取りをすることもないんだろうな。
そう思うと、毎度毎度、少しさびしい気分になる。

たまに仕事で上京する父と、スーツを着て、一緒に銀座へ食事に出掛けるよりも、
あの、北海道の片隅にあるワイン園の草むらで、共に虫を探して黙々と
屈み込んでいたほうが、たぶん、二人の性に合っている。



<今日の一枚というか蛇足>
フォームの参考は、水樹奈々をファンに持つあのキャッチャー。

未だに、右向いた顔がうまく描けない。

真は、虎で強打の右打ち内野手。
伊織との対決が楽しみです。

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Author:yamashirogin
東京に出て、
哲学を学び、
港湾労働者になって、
都落ちして、
函館で働く
洋食屋の息子。

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(☆を@に変えてね!)

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