社会のつらなり

僕の職場は、もう皆さんご存知の通り、
貨物船の入港するコンテナターミナルで、日々、
日本の人々のさまざまな需要を満たすため、
その物流の末節を支えている。

まあそんなことはどうでもいいんだけれど、
そこには当然、船の出し入れや貨物の通関、荷役など、
さまざまな実務が発生し、そこにはそれぞれ
専門のスタッフが携わっている。

僕のデスクの隣にある、船舶代理店のセクションも
そのひとつで、船の入出港の管制やそれに関わる各種
申請、各所への連絡等を行っている。

船長からの要請で船の消耗品を調達したり、
船のトラブルがあったときには修理を手配をするなど、
まさに船に関わることならばなんでもこなす
船のスペシャリストで、船長とのコミュニケーションを取るため
外国語に精通し、税関や入管とやり取りをするため
各種法律を熟知している、すごい人たちである。

ただ、覚えることが多岐に渡るため業務の習熟に
時間がかかるうえ、船に携わるという職種柄、勤務時間が
不規則であったり、夜勤が多くなったりするために
新規の人材が育ちにくく、いまは
おじいちゃんのエージェントが多くなっている。
また、趣味や人柄が一風変わったひとたちが多いように、
個人的には感じる。

そんななかでも、僕の隣の席に座る老エージェントは、
いまも現役のジャズピアニストという、
かなり特殊な側面を持つ方で、休み時間にはよく、
音楽や、お互いに好きな野球の話で盛り上がるのだが、
先日こんなことがあった。

昼休み、安いがあまりおいしくない仕出し弁当の空箱を
返却しに席を立ったとき、ふと目に入ったジャズピアニストの
パソコン画面に、とあるアーティストのホームページが
表示されていたのである。

紅白出場、オリコン1位と最近はその人気にも拍車のかかる、
歌唱力抜群だが胸の無い、ダンスが個性的で阪神ファンの、
声優であり歌手、っていうか僕らにはおなじみの水樹奈々だった。

でもなんでジャズピアニストが水樹さんのアルバム情報を?
と思った僕は、弁当箱を返して、味噌汁を飲み終わったカップを
洗ったあとに聞いてみた。

すると彼は、照れくさそうに「僕の話じゃないんだけれど・・・」
と前置きしながら、こう言った。
「息子がね、この人の歌の作曲をいくつかやってるんだけどね。
オリコン1位なんて、すごいねえ・・・」

へぇーそうなんですkと言いかけて僕はちょっと止まった。
それから驚いた。テンションも上がった。そしてピアニストに詰め寄った。
「ああ、これこれここ」
とピアニストの指すアルバムの収録曲の情報には、確かに、
彼と同じ苗字を持つ人物が作曲家として記載されている。
しかもこれシングル曲だ。ていうか僕の音楽プレイヤーに入ってる。いま。

なんちゃらダイアリーで検索してみたら、作曲家さんの経歴が出てきた。
両親が音楽家で音楽的に恵まれた環境で育った方らしい。

横で、「まあ、全部俺が教えたからね・・・」
と慎ましく笑うピアニスト。

なんじゃそりゃすげえ。ていうかアンタなんでこんなところで、
ヘルメット被って本船に書類持ってったりしてんだ。

でも、そんな人がターミナルには結構居る。
昔NFLヨ-ロッパにスカウトされた元フットボーラーや、
プロのベーシストや、漆職人の跡取りなんかもいる。
普段はみんな、コンテナを修理したり、本船荷役のプランを作成したり、
バナナを盗んで走る外国船員にチャージをかましたりしてるけど。


その日、仕事がひけたあとに友達と三人でカラオケに行った。
ジャズピアニストの息子が作曲した歌をMas.kが歌った。

なんだか、世間て狭いねって、三人で笑った。
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yamashirogin

Author:yamashirogin
東京に出て、
哲学を学び、
港湾労働者になって、
都落ちして、
函館で働く
洋食屋の息子。

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(☆を@に変えてね!)

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